日東工業株式会社
Nitto Industry Co.,Ltd.

 社長 小松の経営日誌

   

10年06月13日 (Sunday)       郵便局を考える


 生産水準は戻って参りました。正月の日誌ではリハビリ状態という表現を使いましたが、現段階ではそんな悠長なケアはしていられなくなりました。昨年の危機で作業者の人数を減らしたのですが、その陣容で受注に対応するために、従業員全員で日々奮闘。納期を守るために懸命に工場を回しているという状態です。でも同じ苦労ならこちらの方がずっと良いですね。もう去年のようなことにはならないで欲しい。百年に一度の危機は、百年に一度にして欲しいと祈っています。

 またまた総理大臣が替わりました。紅白歌合戦のトリじゃあるまいし、毎年変わる日本の顔に海外のメデイアもあきれています。
 新政権の差し迫った課題に郵政民営化法案があります。民主党は、小泉政権で路線を決めた民営化をくつがえし、官が支配する郵便局を基本政策に上げているようですが、皆様はいかが思われますか?その是非はともかく、この法案に関して感じたことを二つ述べさせて頂きます。

 まず、本件を争点に上げた2005年選挙における、自民党の地滑り的勝利はなんだったのかという疑問です。当時の選挙結果から見れば、国民の大半は郵便局の民営化路線に肯定的だと、私はずっと思っていたのですが、今、報道されている状況を見ると、事実はどうもそうでもないらしい。5年の間に与党政党が変わり、経済状況も変わりはしましたが、中身の政策そのものは同じです。あのとき賛成していた国民の意思が、どうしてこうも簡単に、やっぱり反対だよね、ということになるのかが不思議でしょうがありません。当時と現在の、国民の判断基準の差はなんなんでしょうか?どうも総理大臣がころころ変わる背景には、このような点が関係しているように思えてきます。

 もうひとつは、官営で行うにしろ、民営化するにせよ、郵便局網は日本国にとって、非常に価値ある資産だという事実です。日本全国、山間僻地にも存在するネットワーク。国民からの信頼感、知名度。こういう組織は、作ろうと思っても決して一朝一夕には出来ないでしょう。長年積み重ねた実績、歴史が今に繋がっています。ブランド価値としてはすごいものがあります。これは日本国が自慢できる財産じゃないでしょうか。
 ケビン.コスナーが主演した”ポストマン”という映画を見たことがあります。ならず者にアメリカ全土を支配されてしまった。しかし手紙を届けるという国民に託された信頼のために、命の危険を冒してもポストマンは馬に乗って駆け回るという浪花節的近未来映画でした。アメリカの映画は理想のヒーローを描いたのでしょうが、日本のポストマン、ポストウーマンは、こういう誇りを当たり前に職業倫理として持っているのだろうと思いました。当たり前すぎて、わざわざ映画にはならないでしょう。それに対して国民も信頼し、極秘事項も、愛のつぶやきも、80円の保証料金で託することが出来る。これは考えたらすごい幸せです。検閲が日常茶飯事に行われる国や、イラク、アフガニスタンなど治安の悪い国では信じられないことでしょう。 築き上げられた信頼はすごい無形財産です。これほど十二分に信頼がある組織に、現行一千万円以上の政府補償をなんで今更上乗せする必要があるのかと思うくらいです。

 以上の事実から言いたいのは、これだけのすごい組織なんだから、使い方によってもっと建設的なことができはしまいかということです。現行の民間組織で代替できる金融、通信、輸送、それだけに限定するのでは組織の潜在能力に比して寂しい。これからの日本に必要なことに役立てることは出来ないだろうか。例えば、介護、福祉。こんなことにこの組織を使えないだろうか?全国的ネットワークを利用して役所の住民サービスに使えないだろうか?そうすることによって、圧縮するべき財政の補完になり得ないだろうか?
 官がやるか、民がやるか、これは会社で言えば資本構成の問題です。会社で常日頃考えているより大事なことは、どう運営してアウトプットを最大化するかであります。郵便局網という素晴らしい国民資産。いかにしたら最大限の活用が出来るか、その切り口からの議論も是非望むところです。