日東工業株式会社
Nitto Industry Co.,Ltd.

 社長 小松の経営日誌

   

12年07月07日 (Saturday)       仕舞う技術


 あまり使わない物なのになかなか捨てられない。それでは物がたまっていく一方。そこで必要なのは捨てる技術。過去にこんな内容の本が流行りましたね。今でも、シンプルライフとか、断捨離とかいう言葉で同様の思想の実践が見られます。
 捨てる技術ももちろん大事ですが、その前段階として、仕舞う技術について最近考えさせられる機会がありました。工場勤務時に私が使用している社宅の建て替えによる引っ越しです。この時、今まで使っていた机の引き出し、押し入れの中、全て仕舞っていた物を一度ぶちまけてみました。そうすると、出て来るは出て来るは、何年も使わず放置されていた物の山。不要物というのは正確でありません。本来使う機会があったのに、目に触れなかったがためにそのままになっていた物が多いのです。持っていることを忘れ、二重に買ってしまったことが何回かあったんだと知りました。また、あるということを知っていたら食べたはずの賞味期限、消費期限切れの食品。誰か客人が来たら一緒に食べようと思って、むやみに食べるのを敢えて我慢した高価なクッキーも、戸棚の奥にしまっておいたがために、いつしか存在を忘れ、このたび悲しくもゴミ箱へ直行と相成りました。
 同じ物の二重買いという無駄遣い。せっかく買った食べ物を有効利用することなく捨てていることの無駄。なんだ、これはいつも私が工場で口やかましく注意していることと同じ現象じゃないか、と気づきました。
 工場経営においては、2Sと称する整理、整頓が基本中の基本です。しかし工場における整理、整頓は、一般的な概念のきれいに片づけ、見栄えをよくすればいいのとはちょっと違います。例えば、家庭内の食器の片づけで言えば、ナイフやフォーク、スプーン類は食器用引き出しの中に詰め込んでおくのが普通でしょう。机の上に常時並べて置いてあるなんてことはないでしょう。ところが工場で工具類を引き出しの中に詰め込んだとすると、確かに外からはそれが見えず、きれいな空間を作ることには役立つかもしれません。しかし、工場での整理整頓はきれいな空間を作ることが目的ではなく、いかに効率的な仕事ができるかが目的なのです。引き出しの奥の、目ににつかないところにしまわれておれば、私の家の例のように、存在することを失念し、二重買いをしてしまう恐れがあります。また、ある一人の作業者が家庭の主婦のつもりで、引き出しの中をきちんと整理し、一応取り出すのに分かりやすく仕分けはしておいたとしましょう。しかし、この情報が他の作業者に周知されているというステップが踏まれていなければ、これもまた何の意味もない行為になってしまいます。知らない作業者は、やはり、二重買いしたり、どこにあるんだっけと探し回ることになります。ここでは情報の共有という原則が大事なのです。
 そう考えると、工場で行う整理整頓では、仕舞うという行為はむしろマイナスと思った方が良いでしょう。家庭ではすっきりとした空間というイメージが理想かもしれませんが、工場では全てのものは皆の目に触れるように置かれていることがより重要な原則なのです。だから引き出しなんかは極力使うな、工具類はできる限り台の上に置いておけ、あるいは壁に掛けておけと言っています。在庫、仕掛品も同じ。しばらく出荷されない製品だからといって倉庫の中にしまっておくことを許しておくと、ジャストインタイム、作りすぎの無駄という製造業の基本ルールがおろそかになってくる。これも目立つところに置いて、ああなかなか出て行かない製品が工場内を塞いでいる。不便だなあと皆に感じさせて初めて、タイミングを考慮せず、ものを作ってしまったことへの反省が出てくるのではと思います。
 そう言っている私自身が、家庭では非効率的行動を取っていたわけです。家を移って、改めて物を仕舞う際にやるべきは、工場での整理整頓手法の応用です。だが、さすがに、引き出しに入れない、押し入れを使用しないということは無理があります。そこでひとつ、家庭用の方針をたてました。頻繁に使うものを奥に、あまり使わなそうなものを手前に置くというやり方です。便利さにおいては逆行していますが、こうすると日常使用していない物も目に触れる機会が多くなるため、あることを忘れるという事態は少なくなるでしょう。また、長いこと使わない物が頻繁に使う物を取り出す際の妨げになっているでしょうから、工場の不要在庫の例のように、ある時期に、それならば捨てちゃおうかという決断もしやすくなるのではと考えています。
 さてさて、これで引っ越し後の生活の無駄は減っていくのか...時間をおいてご報告いたします。ただし、ボケという根本的要因には目をつぶっているわけですが。